「シングル・ベッド」 1994年 シャ乱Q

今日の映画。

私のチョイスは「スター・トレック」、カコさんは「お買いもの中毒な私！」。
んー。　全然かぶらん。

で、「60歳のラブレター」。

普通のロマンス映画は恥ずかしくてとても観えないけど、
これならなんとかなりそう。

若い人でもそれなりに楽しめるとは思うけど、
これはやはり中高年にオススメしたい。
 

ほんとに60歳になってからだと、
「かなり手遅れ」な状態になっちゃってる方も
いらっしゃりそうだから。（汗）　そこんとこ微妙に。

-------------------------------------------------------

殊勝な気持ちになってるうちに書いてみますか。。。

書けるかな。。。

 

 

あのころはケータイもメールも無かったなぁ。

そもそも22歳と23歳。　おまえのほうがひとつ年上。

オレの給料なんざ、手取りで13万円。　

当時の勤めの理美容師ならそんなもんだったな。

そら、親にも反対されるわな。

今ならオレでも思うよ。　どうやって家族養うんだってね。

 

 

「結婚式なんてしなくていい」 おまえはそう言ってくれたけど。

友達の結婚式のことを楽しそうに話してたな。

勤めてた店に出入りしていた銀行さんが快く言ってくれたな。

「ブライダルローンをご用意させてください」って。

おまえは「借金はイヤや」って。　

「ちゃんとした融資と借金は違う」とオレが何度言っても。。。

保証人も担保もなしで借りられただろ？　オレ、信用あったんだから。

そりゃ審査はあるよ。　

でもな、銀行さん言うんだ。「最後は人柄で判断します」ってね。

 

新郎新婦入れても40人しかいない、小さな式だったなぁ。

お互い早生まれで、でも、おまえの誕生日の翌日が挙式。

おかげで当日は22歳と24歳の結婚式になっちまって。

おまえの親御さんには、「僕、将来必ず自分の店を持ちます！」
なんて大見得切ったけど。

アテなんてどこにもなかったな。　そこまでは誰も保証しちゃくれんさ。

 

 

さんざんワガママやらしてくれたな。

よくガマンしてくれたよなぁ。

「内助の功」なんてカンタンにいうけど。

並大抵じゃないよな。

 

店、持てたな。　ちゃんとやったろ？

慣れないネクタイしめて、スーツ着て。

銀行、金融公庫、さんざん歩き回ったもんよ。

保証人も担保もないんだもん。　そうそうカンタンにいくもんか。

三社から合計で一千万。　よく貸してくれたよな。　

今の時代なら絶対無理だよな。

がむしゃらって言葉、古いよな。

でも、がむしゃらだった。
 

10年で返済する予定が3年で返せたな。

途端に倒れて。　気が抜けたんだな。

ただの風邪が肺炎で一週間入院だもん。

周りから笑われたなぁ。　「あんな働き方、あるもんか」なんて。

 

 

それまでの月給を二、三日で手に出来たんだもん。

金銭感覚も狂うよ。

80万もする時計はめて、酒も飲めないのに女の子のいる店通って。

夜中に何度も鳴らされる営業の電話に

「うるさいから行ってきて」なんて。

おまえ、アレだろ、

オレが勤めてるとき、毎日辞表持って。

「今日辞めてくる」　「辞めてらっしゃーい」なんて。

帰ってきたら、「辞めてきた？」　「明日辞める」なんて。

歯、食いしばってるオレ見てて。

その頃のオレをおまえずっと見ててくれて。

 

県大会で入賞できたとき、あんな遠い表彰台と三階席。

それでもお互いの顔がはっきり見えたよな。



融資取りつけるための銀行回り。

慣れなくて何度も締めなおしたネクタイ。

着慣れないスーツにワイシャツ汗だくにして。

おまえ、そんなオレをずっと見ててくれたから。

やっと独立できて、少しの小銭持てるようになって。

人生で初めてハメ外してるオレを。

おまえ、許してくれてたんだな。

 

おまえには何も買ってやらなかったのに。。。

オレばっかり遊んで。。。

 

 

いろんなガマンが限界だったんだろ？

結婚10年目でオレの前から消えたよな。

いや、オレがみんな悪い。　ちゃんと分かってる。

 

でもな、分かってくれとは言わんが。

苦しかった。　ほんとに辛かったんだぞ。　あの一年は。

閉店間際のスーパーで冷凍食品ばっかりカゴに入れて。

ほとんど休みなく働いた。　それが罪滅ぼしになるとは思わんが。

会いにいっても出てこない、電話も出ない、手紙は破られる。

謝りようがないだろ？

 

何ヶ月目だったか。。。

ようやく一言だけ聞けたと思ったら。

「アンタ人間として最低や。

アンタの顔なんか思い出したくもない。

でも、アンタの腕は一流や。　大阪の大きい店入って、

たくさんの技術者見て、改めてそう思っとる。

アンタの仕事しとった背中を忘れん。

アンタの仕事見れた10年が　私の財産や。

アンタの顔なんか見たくもないが、いつもアンタの背中を思い出しとる。」

 

 

正直な、あん時、店閉める気だった。

街中の笑いもんにされとるような気にすらなるからな。

でも、おまえの言葉がオレを店に立たせた。　立たせてくれた。

 

言ってくれた人もいたな。

「ほんとに奥さん帰ってきてほしいなら、生活の基盤を

揺るがせるな。　仕事なくしてどこに帰ってきてもらえるんだ？」

なんて。　正論だよな。

 

 

あの一年で寿命が縮んだ。

だからおまえはオレより絶対先に逝ってはならん。

借金嫌いなんだろ？　それくらいのワガママ言える利子は付いたと思うぞ。

 

おまえも体、壊したもんな。

だからあれほど言ったろ。　「おまえは基本姿勢ができてない」って。

聞きたくないのは分かるけど、聞かなきゃいけないことは聞くもんだ。

無理すれば壊れるんだ、体ってもんは。

二段飛びで身体は出来ないんだよ。

 

貴美くんにも言われたもんな。

「奥さんの仕事は泣いて覚えた仕事じゃないから」って。

「結婚してからこのひとにどれだけ泣かされたか」ってのが

おまえは必ずそう言うけど。

 

 

「物騒なことは僕たち自身が済ませてますんで。

ここでブライダルシェービングされた花嫁さまの中から

まだ一組も破局した方、いらっしゃらないんですよ。」って。

花嫁さまたち、喜ばれるもんな。

この縁起の良さがウチの唯一のブランドだな。

 

不況にも苦しんだなぁ。

でも、あの痛みが刻まれてるからね。

あれに比べりゃ。　はは。

 

 

いつも場当たりなオレだけど、

おまえの技術のおかげでこのご時世にこれだけの業績だよ。

あの一年がなかったら出来なかったかもな。

技術も発想もね。

 

途端、今度はおまえの手術じゃん。　子宮筋腫と卵巣脳腫。

だから検診に行けってあれだけ日ごろから言ってたろうが。

おまえ、強かったなぁ。

トイレ行くだけで痛みで汗だくになるのに、

「二週間後のブライダルの予約は守るんや」って。

「ブライダルは代わりが利かへんから」って。

 

「それくらいにしておいてください。」

って看護士さんに言われるほど、

三日目で階段上り下りしてたもんな。

あれがおまえの責任感かい。

 

ほんとに二週間で復帰したもんな。

今でもその話題で褒めてくれる常連さん、いてくれるもんな。

でもな。　オレだって頑張ったんだぞ。

気温四十度記録した日に短パンとTシャツ。

集中治療室があんなに冷えてるなんて知らんもん。

冷たくなってたおまえの手、ずっとさすってたの知らんだろ。

おまえは術後の体ですごい熱だろうけど、

こちとら生身だもん、普通に凍えちまう。

病棟に移ってからもおまえ、熱下がらなくて。

オレ、何度スーパーへ「熱さまシート」買いに走ったか。。。

 

今でもおまえは疎ましがるが。

大変なことになる前に手術できたんだ。

良い意味でいろんな偶然も重なってくれたもんなぁ。

そこは感謝してくれてもいんじゃないか？

ほら。　そこでも少し利子が付いたぞ。

 

病室の人たちにも恵まれたなぁ。

みんないい人だった。

みんな元気だろうか。　元気だよな、きっと。

 

あの頃より少しは金銭の使い方も覚えたはずだが。

赤堀さんは毎回叱ってくれるが。

 

なんであの頃と同じサイズの布団で寝てるかね。

♪ シングルベッドで夢と お前抱いてた頃・・・　　

なんてね。



 まだ叶えてない夢、あるよな。

いいつつ、これ以上の欲を言ったら罰が当たる。

 

それが分からんほど

オレも馬鹿じゃないやね。

愛知県名古屋市を中心としたブライダルシェービングエステ、レディースシェービング、女性のお顔そり